洋楽を通して自分を知るウェブログ

洋楽の歌詞を和訳してから、気が済むように解釈して、自分の考え方を書き残してみたい、だけです。

Taking Back Sunday - Liar (It Takes One to Know One) 和訳

 紹介

2019/01/21

Taking Back Sunday 来日公演を観てきました。人間の耐えられる感動のキャパを完全に超えたので僕は放心状態になりました。僕の人生において鼓膜が最も愛した音に、ついに生で出会えました。

 

Liar (It Takes One to Know One) の生演奏をAdamの目の前で聴いているとき、数秒間、十年前の僕の自我みたいなものが現在の意識に遊びに来ました。それは「生きていてくれて嬉しいよ、まさかこの身体が特等席になるとはね」というような感情を現在の僕に置いていきました。

なので逆に歌詞のわからなかった当時の僕のために、この曲の和訳を置いておきます。

 

 


Taking Back Sunday - Liar (It Takes One To Know One)

 

 歌詞・和訳

[Verse1]

All our secrets they are tailored trouble
Draped loose now around your hips
Your spotless instincts are valid
We coexist

僕らのあらゆる隠し事は仕立てが悪くて

君の腰回りにゆらゆらとドレープを成している

シミひとつない君の本能が効いて

僕ら共存している

 

Got 26 days to work with (got 26 days)
We got 26 days to work with (it moves, it moves, it moves)
We'll see what all gets done

26日間を乗り越えた

協働した日々の先で

(動いてる、動いてるよ)

僕らは何をしたのかを思い知る

 

[Pre-Chorus1]

I'm an addict for dramatics
I confuse the two for love
"You can't tell me that you don't beg..."

僕は演技に中毒になっていて

それを愛だと混同してしまう

"求めていないとは言わせない…"

 

[Chorus1]

Liar (liar)
If we're keeping score
We're all choir boys at best
(Intrusive and arrogant)
Liar (liar)
If we're keeping score
We're all choir boys at best
(Intrusive and arrogant)

嘘つき

こんな点数稼ぎをしても

せいぜい綺麗事を唱えるだけさ

(押し付けがましく、傲慢な)

嘘つき

こんな競争を続けていたら

僕らどっちも聖歌隊の少年側さ

(押し付けがましく、傲慢な)

 

[Verse2]

Got 26 days to work with (got 26 days)
Then back on that island
That you swear by
Still barely can afford
It's still a question of
How long will this hold?

26日間を乗り越えた

君の信頼するあの島へ戻ったところで

未だ何も生みやしない

ただ疑問が残り続ける

これはいつまで持つのだろう?


Is it any different now that we are
Don't you go there not here, not now
(it moves, it moves, it moves)
Not here, not now

もはや僕らになんの違いがあろうか

そこへは行くな、ここにいちゃいけない、今はダメだ

(動いてる、動いてるよ)

今ここではダメだよ

 

[Pre-Chorus2]

I'm an addict for dramatics
I confuse the two for love
"You can't tell me that you don't beg..."

僕は演技に中毒になっていて

それを愛だと混同してしまう

"求めていないとは言わせない…"

 

[Chorus2]

Liar (liar)
If we're keeping score
We're all choir boys at best
(Intrusive and arrogant)
Liar (liar)
If we're keeping score
Were all choir boys at best
(Intrusive and arrogant)

We're all choir boys at best

 

嘘つき

こんな点数稼ぎをしても

せいぜい綺麗事を唱えるだけさ

(押し付けがましく、傲慢な)

嘘つき

こんな競争を続けていたら

僕らどっちも聖歌隊の少年側さ

(押し付けがましく、傲慢な)

聖歌隊の少年側さ

 

[Outro]
Liar (liar)
Liar (liar)

It takes one to know one

嘘つき

嘘つき

「お互い様」だよ

 

 解釈・考察

初めて聴いた頃はサビの Choir Boys という表現が意味不明だったのですが、海外の歌詞考察掲示板覗いたら「これはウィリアム•ゴールディング『蠅の王』が元ネタ」らしいので、映画のほうを観てみました。https://www.google.co.jp/amp/s/eiga.com/amp/movie/47861/

(一応、wikipediaでも十分あらすじが読めます↓)

ja.wikipedia.org

そしたらサビに限らず曲全体の歌詞のモチーフの一つとして『蠅の王』が用いられてるという見方に納得できました。

『蠅の王』では、無人島での生き残りをかけた共同生活を舞台にして「理性に従う少年ラルフと、本能に従う少年ジャックおよびその仲間たち(聖歌隊の少年たち)との対立」が描かれています。Liarの歌詞では、二人の恋人生活を舞台に「真摯に誠実に相手を愛している自分と、自分を裏切って巧みに嘘を重ねる相手との対立」があるという建前をお互いが持っていて、でも結局はどちらも裏切り者で嘘つきで同類なんだ、ということが歌われているのだと思います。

[verse]での "it moves, it moves, it moves" は疑心暗鬼の表現だと考えられます。『蠅の王』では野蛮化したジャックたちが暗闇の中で恐怖心に駆られ、仲間をモンスターだと勘違いして殺害してしまうシーンがあります。Liarの歌詞では、自分たちが作り上げてしまった嘘のしわ寄せ(=君の腰回りのドレープ)が怖くなり、ただ現実のドレープの揺れ動く様子に恐ろしさを見出してしまっていると読めそうです。(深読みしすぎな気もするけれど、他に解釈のあてがない…)

[chorus]の "choir boys" は上述の通り『蠅の王』でいうジャック側、野蛮な悪役側を意味すると同時に、本来の「聖歌を歌う少年」という語義から「上品に建前の綺麗事しか言わない」という印象も重なっていると解釈しました。二人はお互いに、自分は誠実で本音を言う善人で相手は建前しか言わない悪人だというスタンスでいますが、結局やってることは全く同じな訳です。

[outro]および副題の "It takes one to know one" は「お互い様」を意味する慣用句です。同類だから君のことはわかる、君が僕を求めていることもわかるし、僕を裏切っていることもわかるし、そして嘘つきなのもお互い様!

そして突き放すような outro のサウンドのかっこよさ。

 

内容は残酷だけど惚れ惚れするような魅力的な構造の歌詞でした。

 

あと2サビ入るときだけギターが2拍目から来るのかっこよすぎて生で観ながら意識飛びかけたこと今思い出した。

 

 

おしまい